サマーシーズン到来!


毎年杜王町 兄の住む町では7月1日に「海開き」「川開き」が行われ――――
町の観光収入の約7割がこれからの2ヶ月に集中します――――
おもに首都圏方面や九十九里 S市からどっとやってきて、人口も2倍以上に増えます――――


「別荘での避暑」 「ゴルフ」 「キャンプ」 「フィッシング」 「蒼竜アニキの家でゴロ寝」

「ヨット」 「ウィンドサーフィン」 「コミックマーケット」 「海の幸や実り豊かな農作物を使った夕食」


この時期の この町にはお楽しみがいっぱいです。

そう…………………
お楽しみがいっぱい
………………………

あいつにとっても
きっと『お楽しみがいっぱい





兄と咲耶、千影の3人は夏休みということで衛の家に泊まりに来ていた。
晩ご飯も咲耶と千影(某料理)の活躍によって、とてもおいしい料理が出来たのだが、食事中、衛はずっとそわそわしていた。

兄 「どうした?衛。どこか具合が悪いのか?」
衛 「えっ…! ああ、いやぁ、何でもないよ。あはは。」

衛は慌てて笑って見せたが、やはりどこかおかしかった。


食器を洗い終わった後、4人は2時間ほど雑談に興じていた。
その間も衛は会話にはあまり参加していなかった。
その時、急に衛が立ち上がって、

衛 「ご…ごめん。ちょっとボク用があるから……すぐ戻るね。」

と、衛は自分の部屋へと駆け出していった。
残された3人は、衛の不自然を感じながらキョトンとしていた。

兄 「衛……やっぱり何か変だな…。」
千影「ふむ……あれは何かわけありだね……SPW財団特製の自白剤で白状させてもいいのだが……。」
咲耶「いえ、それよりも当て身を当ててから、首を軽くひねれば簡単に済むわよ。」
千影「それなら『隠者の紫』で……頭の中を読むというのもありだね……。」
咲耶「カッタルイことは嫌いなタチなんで、オラオラでいっちょ上がりね
兄 「おいおい……なに物騒なこと言ってんだよ…。衛が心配じゃないのか…?」


ともかく衛はすぐに戻ると言ったので、3人はそのままリビングで待っていることにした。
ただ待ってるだけでは暇なので、近くにあったドリキャスを繋いでパワーストーン2をプレイすることにした。

咲耶「パワーチェーンジ!!オホホ〜、いたぶってあげる!!」
兄 「いや〜ん、やめて〜。わたしはただのボロットよッ。」

そのころ千影はCPUを火炎放射器でハメていた。

兄 「カンペキだぁ〜!!ファイヤー!ファイヤー!今だ、半径20mエメラルドスプラッシュ!!」
咲耶「ああっ!卑怯よッ、お兄様!!」

そのころ千影は『トイパレード』をバッドカンパニーと言わずに、何故半径20mエメスペと言うのか不思議に思いながら、
2人の背後でアースクエイクをぶちまかしていた。

兄&咲耶「な・にィィィ〜〜〜〜〜ッ!?」





             リタイヤ
K.O! 再起不能





千影「どいつもこいつも………軟弱だね……。」
兄 「千影、きさまこのゲームやり込んでいるなッ!」
千影「答える必要はない……。」
咲耶「千影ちゃん、強いわね〜。3分の2は勝ってるんじゃない?」

かれこれ1時間ほど遊んでいたのだが、まだ衛は戻ってこなかった。

兄 「そういえば、衛遅いな〜。さっきの行動も奇妙だったし、少し様子を見てくるか。」
千影「奇妙といえば………」
咲耶「ジョ……」

千影は咲耶の口を抑え、話を続けた。

咲耶(ちいっ!)
千影「最近、奇妙な情報を仕入れてね……。実は私たち12人の中に……
   同人活動をしている妹がいるという噂を聞いたんだよ……。」
兄 「ど、同人活動!?それまたえらい話だね。」
咲耶「で、その人生の落伍者的な穀潰しは一体誰なの?私が性根を叩き直してあげるわッ。」
千影「それは……知らない方がいいんじゃないか……?
   本人が名乗り出ないということは……知られたくないということだよ……。」
兄 「う〜む……千影の情報だから、デマということはありえないんだろうけど……。同人ねぇ…。」

とりあえずそのことは置いといて、兄は衛の部屋へと向かうことにした。
そして咲耶と千影の2人はパワーストーンで決着を付けることにした。

咲耶「準備オッケー!!

千影「オッス!おいらワンタン!

何か変な声が聞こえた気もしたが、かまわず部屋に向かった。




衛(くっ……………)

人は自分の心の底を『他人』に隠したまま生活している。
しかし………
永遠に誰にも『自分の本性』を隠したまま一生をすごせるものだろうか?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
くそっ!
あにぃにこのボクの『本性』を打ち明けてやりたい……
あにぃにこの『心の底』を聞いてもらいたい…。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

あにぃの体をネタにして、や○い同人誌が描きたいってことをな……

コミケのある時期』は気持ちがおさえられなくなる。
でも今はなんとかしておさえるんだ。
ヘタな行動をとると、正体が咲耶ちゃんたちにバレてしまう。
まだ次のネームすら完璧に出来ていない。安心して落ちつくまでがまんするんだ。

ガリガリガリガリガリガリ
衛が原稿にトーンを貼っていた時、

パタパタ
衛 「

コンコン
兄 「衛、いるかい?開けるよ。」

と、部屋のドアが開けられた。
衛は急いで原稿を隠し、机にスポーツ雑誌を広げた。

兄 「衛……えと…何をしてるんだい?」
衛 「…………………」

兄は机にあったスポーツ雑誌を見て一人で納得した。

兄 「そーだよね、見れば分かるよね、『雑誌』読んでたんだ。」
衛 「…………………」

衛は沈黙を守ったままだった。

兄 「あ〜、いや、その……さっきの衛…何かおかしかったからさ、心配事でもあるんじゃないかって思ってさ。」
衛 「………………」
兄 「あっ、そうだ。今日は久しぶりに一緒に寝ないか?咲耶と千影には悪いけどね。」

兄は上着を脱ぎ、ワイシャツ姿になった。
その時、衛が異常な反応をした。

衛 「…………………

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
衛は兄の背後にそっと近づいた。

衛 (あにぃに『心』を打ち明けろ。自分の『本性』を見せてやれ、衛。)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
衛 (あにぃの体でや○い同人誌を描きたいと打ち明けるんだ。)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
兄 「はっ!」

バリバリバリバリィ!
衛は後ろから兄のワイシャツのボタンを思い切り引きちぎった。

兄 「うわぁっ!」

兄は衛の突然の行動に驚き、数歩遠ざかった。
それを見て衛は後悔した。

衛 (し…しまった………。打ち明けるのはまずい…咲耶ちゃんたちにバレてしまう…
   『気持ちをおさえろ』…………おさるんだ……)

兄 「ま…衛……!?」
衛 「驚かして………ごめん………。」

兄 (ワイシャツのボタンをはずそうとしてくれたのかな…?『驚かしてごめん』だって……?
   とんでもないよ、最近の衛の行動すごくドキドキするわ。そしてすごくワクワクするわ!

衛の大胆な行動に混乱し、口調が川尻しのぶになってしまう兄であった。

衛 「そ…そうだ、リビングに咲耶ちゃんと千影ちゃんが待ってるよね。早く行こう、あにぃ。」
兄 「あ…ああ。そ…そうだね。」



そのころ咲耶は………


咲耶「見事ォォォォォォォ!!

千影「ぼくの名誉にかけてッ!!

千影に全敗していた。


と、その時!

ピキーン!
咲耶「はっ!!」
千影「むっ!!」

2人は同時に何かに気づいたようだ。

千影「咲耶ちゃんも感じたみたいだね………どうやら兄くんに危機が迫っているようだ……」
咲耶「そのようね、きっと衛ちゃんに何かされてるんだわ。」

咲耶と千影は、兄に起こった不幸が兄妹のきずなの直感でわかる。
承太郎やジョセフのジョースター家の血統が感じ合うのと同じように。

咲耶「急ぐわよッ!お兄様の貞操が危ないわッ!」

千影「バルバルバルバルバルバルバルバル!!

バオー・武装現象(アームド・フェノメノン)と化した千影を引き連れて、咲耶は衛の部屋へと急いだ。




兄 「本当に何ともないのか、衛。」
衛 「うん、ホントに大丈夫だって。」

兄と衛は部屋を出て、リビングに向かおうとしていた。
その時、リビングの方からドタドタとものすごい音を立てて近づいてくる物体があった。

咲耶「はわわわわわわぁ〜!!お兄様、今行くわよ〜!!」
千影「バルッ!

千影は早くも手首の皮膚を硬質化し、『バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン』の体制に入っていた。

兄 「って!うわぁっ!なんだぁー!!」

咲耶と千影は兄にぶつかる一歩手前で立ち止まった。

咲耶「お兄様!大丈夫!?衛ちゃんに何かされなかったッ!?」
千影「ふむ……寄生虫『バオー』のパワーはすばらしいね……。」

千影はいつの間にか元の体に戻っていた。
咲耶は咲耶で兄のワイシャツの襟元を思い切り掴み、前後に揺さぶっていた。

兄 「さ……咲耶……苦しい………」
衛 「ちょ、ちょっと咲耶ちゃん!あにぃが死んじゃうよッ!」
咲耶「はっ!お兄様しっかりしてッ!」
千影「キズは浅いよ……まだ助かる……。」

とりあえず息を整えた兄は、2人が何をしにやってきたのか理由を聞いてみた。

咲耶「それでねッ、OVA版のエンヤ婆は、何故か若返ったピチピチギャルなのよッ!」
兄 「いや…何言ってるのか分かんないんだけど……」
千影「先ほど兄くんに……危機が迫っているような感覚があったんだよ……。」
兄 「危機…?いや別にそんなことはなかったけど…。」

兄は衛をチラっと見たが、さっきのことには触れないことにした。

衛 (あにぃ…ごめんね……。)

兄は2人に何事も無かったことを伝え、とにかく落ちつかせた。

兄 「だから何事もなかったんだよ。わかったかい。」
咲耶「そ…そうなの。それならいいんだけど…。」
千影(しかし……邪悪な『におい』が消えないのは確かだ………バルッ!

とりあえず2人は落ちついたようだった。

咲耶「ま、とにかくお兄様が無事でよかったわ。あ〜、急に走ったから汗かいちゃったみたい。」

咲耶はポケットから香水を取り出し、体に吹きかけた。
その時、今まで大人しかった衛が香水に反応したようだった。
そして衛は咲耶の手から香水を突然取り上げた。

バッ
咲耶「あっ、ちょっと何するのよ、衛ちゃん。」
衛 「咲耶ちゃん、悪いんだけどウチには子犬がいるんだよ、香水は遠慮してもらいたいんだ。
   咲耶ちゃんはお客だけど、ウチのルールに従ってもらうよ。わかったね。」

と、衛は咲耶のポケットに香水を押し込んだ。

衛 「じゃ、リビングに戻ろうか。」
咲耶「まちなさい、口で言うだけで素直にしまうのよ…大物ぶってカッコつけてるんじゃないわよ、このマモ!

咲耶はいきなり衛に暴言を吐いた。
それに衛は少し驚いたようだった。

兄 「おい咲耶!衛に対して無礼はやめろッ。おまえが悪い!」
咲耶「フン!承知の上の無礼よ。こいつは普通の衛ちゃんじゃないわ、今わかったわ!同人作家は衛ちゃんよ!
兄 「な、なにィーーーーーッ!!」

ぎくうっ
衛は図星だったが、バレないように冷静を装っていた。

衛 「どう…じん??なにそれ、いったい。」
兄 「それは考えられないよ咲耶。衛はスポーツ一筋で、そんな話はしたこともない。同人作家の疑いはゼロだ。」
千影「咲耶ちゃん……いい加減な推測は惑わすだけだよ……。証拠はあるのかい……?」
咲耶「私は『同人作家』に共通する見分け方を発見したわ。それは…同人作家は、香水の匂いを少しでも吸うとね…」








『鼻の頭に、血管が浮き出る』








兄 「えっ!」
千影「フフ……ウソだろ、咲耶ちゃん……。」
咲耶「ええ、ウソよ!だけど……マヌケは見つかったみたいね。」
衛 「アッ!

衛は咲耶のハッタリに引っかかり、鼻の頭をおさえてしまった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


千影「咲耶ちゃん……なぜ衛ちゃんがあやしいと分かったんだい……?」
咲耶「いえ、ぜんぜん思わなかったわよ。だけど……妹全員にこの手をためすつもりでいただけのこと……よ。」

衛は、もはやバレてしまったと悟り、戦闘態勢に入っていた。

衛 「シブイねぇ……まったく咲耶ちゃんシブイよ。確かにボクは同人作家さ。
   コミケだって2年前から毎回行ってるし、コスプレだってこなせるよ。」
咲耶「それじゃあ衛ちゃんは、コミケで寝ぼけてなさい!!」

バキィッ
衛は咲耶の一瞬の隙をつき、兄を殴り倒していた。
兄は悲鳴すら上げずに昏倒した。

千影「!!
咲耶「しまったっ!!」

ドチャアアアアアアアァ

衛 「や○い専門の同人作家! ショタとゲイはお手のもの!
  未知の世界への恐怖を暗示する『月』のカード!その名は、













ダークまもるムーン
         『暗衛の月』!!











衛 「月に変わって、おしおきよッ!」






咲耶「おしおきされるのは、あんただっつーのッ!!

衛は往年のセー○ー戦士のポーズを決め、あまつさえ主題歌まで歌っていた。










♪ひ〜とつ人よりおっきなお腹〜 ふ〜たつ不思議なポケットつけて〜
み〜つ未来のロボットだい!  な〜んでもほいほいま〜かしとけ!
そんじょそこらの〜(あ、どした!)そんじょそこらの〜 ネコじゃ〜ない〜♪







咲耶「………………」
千影「咲耶ちゃん……今のうちに兄くんを助けたほうが……」
咲耶「はっ、そ、そうね。」

一瞬、衛の歌に聞き惚れた自分がちょっと情けなかったと思う咲耶であった。
咲耶が兄を取り戻そうとした時、衛が一瞬早く兄を掴んでいた。

衛 「甘いよ、咲耶ちゃん。あにぃが手に入ったのは、このボクに運が向いている証拠……
   今からあにぃをボクの部屋へと連れ込むよ。当然2人はボクの部屋へと追ってくるしかない。
   ボクのホームグラウンドなら2体1でも相手が出来る。やれるかな?」

咲耶「人質なんかとってなめるんじゃないわよ。この咲耶がビビリ上がると思わないでほしいわね。」
衛 「なめる…これは予言だよ!」

と、衛は兄を引きずって部屋に入ろうとした。

衛 「ついてきな、や○い同人誌をたらふく読んでそっち系に目醒める勇気があるならね。」

衛は部屋に半分入りかけようとした。
と、その時、

ドガッ!
咲耶が部屋のドアを思いっきり蹴り飛ばし、衛がドアに挟まってしまった。

ガシッ!
その隙に千影が兄をひっぱり、助け出していた。

衛 「い…痛ったぁ!へ…部屋に入る前に攻撃してくるなんて……そんな…。」
咲耶「や○い同人誌をたらふく読むのはあなた一人よ。千影ちゃん、何か言ってやりなさい。」
千影「占い師の私をさしおいて予言するなど………10年早いよ……。」

ドアとの間で倒れた衛はそのまま動かなくなった。
千影は兄の様態を見て、さっきの衝撃は打ち所がよかったことを確認した。

千影「どうやら兄くんは無傷のようだね………。咲耶ちゃん、どうしたんだい…?早く兄くんを介抱しないと……。」
咲耶「う………う……」

咲耶は脂汗をかいて、必死に何かに抵抗しているようだった。

咲耶「ま、まずいわ。ひきずり込まれる。」
千影「なんだって……!」

咲耶の手にはいつの間にかワイヤーが巻かれていた。
そして倒れていたはずの衛の姿はいつの間にか消えていた。
ワイヤーは部屋の中から伸びていて、咲耶を力強く引っ張っていた。

千影「咲耶ちゃん……早くそのワイヤーをほどかないと……」
咲耶「それが出来ないから……くっ、かきたくもない汗をかいているのよ…。」

グイッ!
ワイヤーを引っ張る力がさらに増していき、咲耶も体力の限界がきていた。

咲耶「わっ!ホントにやばいわッ!千影ちゃん、何とかしてッ!!」

千影「咲耶ちゃん、私には衛ちゃんに勝てる腕力はない……。気の毒だが……。しかし咲耶ちゃん、
   無駄死にではないよ!キミが衛ちゃんをを引き付けてくれたおかげで……兄くんを助けることができるのだ!」

咲耶「助けてください!シャア少佐!……って、結局クラウンは無駄死にだったじゃないのよッ!」

ガッ!
余裕もないのにボケたせいで力が抜け、一気に部屋へと引きずり込まれてしまった。

咲耶「きゃあァッ!!」
千影「咲耶ちゃん……健闘を祈る……」

バタンッ!
ガチャッ

ドアが閉まったのと同時に部屋のカギを掛けられてしまった。

にやそ
千影「フフフ……私はあくまで兄くんが無事でいればいいんだ………できるだけ汗をかかず、危険を最小限にし、
   バクチを避け、戦いの駒を一手一手動かす………それが『真の戦闘』だよ……。」

千影はエイジャの赤石を手に入れたカーズのように勝ち誇っていた。
そして衛の部屋では、兄争奪の死闘が始まろうとしていた。



                                               ダークまもるムーン
衛 「よお〜〜〜こそ、よお〜〜〜こそ、フッフッフッフ。よお〜やく来てくれたね、暗衛の月の独壇場へ。」

衛の部屋の本棚には、ところ狭しと本が並んでいた。
その約半分は普通の冊子ではなく、同人誌が占めていた。
壁には大量のポスターで埋め尽くされ、すべて男が描かれている絵であった。

衛 「フフ、どうだい咲耶ちゃん、ボクの部屋は。実に芸術的だろう?」

咲耶はやっとの思いでワイヤーをほどき、『キッ』っと衛に向かい合った。

咲耶「どうやら人生の先達者として、衛ちゃんにはキツーイおしおきが必要みたいね。」

バキボキバキ!
咲耶は指の間接をならし、闘技流法の構えをとっていた。

衛 「フフフ、周りをよく見るといいよ。」

咲耶は言われた通りに周りを見たが、衛の言った意味が分からなかった。

衛 「咲耶ちゃんのいる場所には、ポスターからの目線が集中することに気がつかないのかい?」

言われてみれば、ポスターの男の視線はすべて部屋の中央に集中しているようだった。


咲耶(だから何……?)


しかしよく見ると、ポスターに描かれている絵は普通の絵ではなかった。



空条承太郎、DIO、ラオウ、霞拳志郎、富樫源氏、剣獅子丸、愚地独歩、花山薫、オリバ


すべて筋肉隆々の漢たちで埋め尽くされていた。

咲耶(うわ……確かにこれはキツイわ……)
衛 「そしてッ!コレを見たまえッ!!」

衛が机の引き出しから取り出したのは、さっき描いていた原稿だった。

衛 「これがボクのマンガ、タイトルは『あいしてるっていってほしい』さッ!!」

衛が描いたというマンガは、兄を一人占めしたいという願望をもつ弟が、意を決して、
その…………
まあ、いわゆる兄を襲ってしまうタフガイな内容なのです。

咲耶「なッ!それってもしかしてッ!?」

咲耶はすぐにそれに気づいたようだった。

衛 「ぬふっふっふっふ、そのとおり。これはボクとあにぃがモデルなのさッ!!
咲耶「なんてうらや………じゃなくて、下品な……。」

衛は間髪入れずに次の行動に入っていた。

衛 「さあどうする!?漢たちに見つめられ、さらにあにぃ受けの同人誌を見せつけられてッ!
   力を吸い取られて、ろくすっぽ動けないその体でボクに勝てるかな?」

咲耶はいつの間にか衛の暗示にかかってしまって、身動きが取れなくなっていた。

衛 「おしおきするとかぬかしていたねッ!や○に目醒めておしおきされるのはッ!」


ビシッ
その時、咲耶は最後の力を振り絞り、衛に向かって行った。

衛 「なッ!」

そして力を指の一点に集中し、闘技流法『輝彩滑刀』のように鋭い刃のようになっていた。










  シスターフィンガー
『姉妹指刺』!!









ビュン!
咲耶は衛の原稿を指で切り裂いていった。


ビリ!ビリ!ビリ!ビリ!
衛 「ああーーッ!!ボクの大切な原稿がァ!」
咲耶「やれやれだわ、この程度でこの私を倒せるとでも思ったのかしら?」

バキボキバキ!
咲耶は再び指の関節をならし、オラオラの体制に入っていた。

衛 「あの…え〜と……。そ、そうだッ!ボクのアシスタントにならないか?
   そうしたらや○いのすばらしさがわかるよッ!……って、聞いてます?」

咲耶は笑顔で衛に近づき、コブシを振り上げた。



咲耶「おしおき


そして数分後、咲耶は疲れたので殴るのをやめた。




衛 「ふっ、ボクがまちがっていたよ。」

廊下に正座して改心している衛に、咲耶は満足してうなずいた。

咲耶「そうそう、やっと素直になったわね。」
兄 「そ、そりゃあ……」
千影「あれだけ殴れば当然だよ……。」

兄は千影の介抱によって意識を取り戻していた。

衛 「いや、そうじゃないよ。ボクは分かったんだ。あにぃを受けにして
   や○い同人を描くなんて、間違っているって。」

咲耶はうんうんと首を縦に振りながらうなずいていた。

衛 「ボクは決めたよ。もう2度とあにぃ受けの同人誌を描かないって。」

咲耶はまたもうんうんとうなずいたのだが、一つ引っかかることに気がついた。

咲耶(……なんか一つ忘れてない?)

衛は目をキラキラと輝かせて高らかに宣言した。

衛 「と、いうわけで!」

ビシッとポーズを決め、右手にはペンが握られていた。







衛 「次はボクが受けで、あにぃが攻めのや○い同人誌を描くよッ!!

咲耶「ひとりでやってなさぁぁぁぁぁいッ!!


叫びとともに、今度こそ手加減なしのコブシが衛を一撃した。





や○い同人……見たことないです。
封神演義が大好きな蒼竜アニキなら、一冊ぐらいもっているかも。
あれって、9割がや○いだしね。
ジョジョ14+40巻ということでしたが、最終的には色んなネタが詰まった内容になりました。
咲耶が衛をボコボコにするというのはどうかと思いますが……
ほら、これって『ジョジョ・プリ』だし。
……なんて。


『川尻浩作川尻浩作川尻浩作川尻浩作』
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