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いつもの通り、兄と咲耶は二人で下校をしていた。
そしていつもの通り咲耶の「少しでも長くお兄様と一緒にいたいんだもん」というわがままで遠回りの道を歩いていた。
そんな矢先のことだった。

「あれ?咲耶、こんなところにレストランができてるよ。いつの間にできたんだ?」

兄が何やら小さい看板を見つけたらしい。
道の隅に目立たないように立っている看板は、一見して客を呼ぶ役目を果たしていないようだった。
そして、その看板にはこう書かれていた。
『魔界料理  Dark Angel  ここ左折100m先』

「………………?」

キョロキョロ
「そんなのどこにあるの?」

「どこってこの先100mだよ、看板にそーかいてあるよ。」

「この先?この先は郊外よ。こんな商店街から離れたところにお店を出してお客なんて来るのかしら?」

「咲耶〜〜〜、その通好みっぽいところが逆にそそるんじゃないか?
 あっ!こりゃたまらん!ヨダレずびっ!
 〜〜っていうような味だよ、きっとおお〜〜お〜〜っ!」

「お兄様これから寄る気なの?私お腹空いてないわよ。」

「咲耶はウラやましいよなあ〜〜、お母さんの手料理とお弁当が毎日食べられてさぁ〜〜
 僕なんて自炊だもんなァ〜〜〜、妹達の世話もあるし〜…。」

「な〜んだ、それだったら私が毎日お兄様のためにお弁当を作ってあげるわよ

「いや、それは白雪の役目だから。」

「あ、そ………わかったわよ、付き合うわ。お金持っているの?」

「僕の家、食べてくだけのカネはあるから。行こ行こ、しゅっぱぁ〜つ!」

兄の強引な誘いに少し呆れはしたが、咲耶もまんざら嫌というわけではなかった。
いつも奥手な兄がこうして誘ってくれるだけでも咲耶はうれしい限りだった。
……その店を見るまでは。


「……ここよねぇ……。」

「……ああ、ここでいいはずだ。」

さっきの道を左に進んだところにその店は確かにあった。
店の看板も『Dark Angel』と書かれているので間違いなかった。
その店は『魔界料理』と書かれていた通り、なかなかユーモアのある雰囲気だった。
まず二人が最初に思ったことは、『黒い城』だった。
確かに見た目は全体が黒く染まった城に見えた。黒い色はペンキではなく黒曜石を使っているのだろう、所々光を反射していた。

「私、なんか急に不安になってきたんだけど……。」

「だ、大丈夫だよ、こういう店も悪くはないって。それにカナダではこういうオカルトな雰囲気のレストランが実在するんだよ。」

「それに何?この『お客様次第』ってのは。」

店の前に立っていた看板には『本日の料理 お客様次第 コーヒー、デザート付き 3,500YENより』と書かれていた。

「わかんないけど、とにかく中に入ればわかるよ。」

「あっ、ちょっとお兄様!」

兄は店の扉を開け、中に入っていった。咲耶もすぐにその後を追っていった。

ギィィィィィィィ
扉というよりは城門といった感じだったが。
中は昼過ぎにもかかわらず薄暗かった。照明は壁に掛かっているロウソクのみで、ライトなどの電気器具は使っていないようだった。
周りを見渡すと、西洋のヨロイ、漆黒の棺桶、しゃれこうべや見たこともないような形のヘビのホルマリン漬けなど、およそ我われの日常ではまず見ない光景が広がっていた。
まさに『魔界料理』にふさわしい雰囲気と言えた。

「…お兄様、私コワイ…。」

「まあまあ、これはこれでなかなか雰囲気いいじゃないか。何か千影のセンスに近いようで……」

「…………呼んだかい?……兄くん……。」

「って、うわっ!千影かッ!?」

「そうだよ……いらっしゃいませ……さ……席へ付くといいよ……。」

音も無く現れた千影に二人は驚いたが、予想しなかったことでもなかった。

「…えっと、千影が経営してるの?この店。」

「見ればわかるじゃないの…。」

「シニョール……私一人で経営してるんだよ……兄くん……。」

「そ、そうか、まあいいや。それより何食べるかな?メニューを見せてくれないか?」

            リスタ
「メニュー……?『献立表』のことかい……?
 そんなもの……ここにはないよ……。」

「!」

「……………………」

「どういうことだい?メニューがないってことは…」

「料理の献立は………お客様次第で決定するからだよ……。」

「いや、だから僕が何を食べるか決めるからメニューを見せてくれって。」

「フフフ………違うよ、兄くん……。私がお客を見て料理を決めるということだよ……。」

「お客を見て決めるってどういうこと…?」

千影は咲耶の質問には答えずに兄の手を取っていた。

「ふむ…………兄くん……昨日貧血を起こしたね……。

「え!?」

「兄くんは少し血が足りないようだ………。そして……肝臓が悪いようだね………。」

「!?………」

「ちょっと左手も見せてくれないか……?
 ……左下の奥歯に親知らずがあるようだね……。」

「そ…そんな……?なんでわかるんだ?」

「何…?お兄様……ま…まさか!」

「フフフ……私は両手を見れば肉体全体がわかるんだよ……。」

「そっ…そのとおりだよ、全部当たってるよッ。」(シスコンって言われなかったのがうれしい

「私は……自分の料理を極めるために……世界中を旅してきた……。
 高野山の密教徒にも教えをこいた………中国で毒についても研究した……チベットで波紋の修行もしてきた……。
 そして私の故郷……魔界料理にとりいれたんだよ……。数十億年の歴史を持つ魔界では病気もなく、人々はとても長命だ……
 それは体質だけではなく……この魔界料理を食べているからなんだよ……
 私は君たちに………快適な気持ちにするための料理を……出すことを約束するよ………。」

と千影はひとしきり話したあと、少し深呼吸をした。

「おっと……説明する暇があったら……料理を出さなくてはいけないね………咲耶ちゃんはどうするんだい……?」

「えっ、私?ああ、私はあんまりお腹空いてないからコーヒーだけでいいわよ。『ブルーマウンテン』ひとつ。」

「オ・カピートォ……かしこまりました………。」

注文を受けた千影は厨房に入っていった。
しかし、いくら千影が色々なところで料理の勉強をしたと言っても、咲耶にはやはり信用できなかった。

「お兄様、やっぱり魔界料理なんて言うぐらいなんだから、絶対変な材料を使ってるに決まってるわ。
 もし、ちょっとでも変な味がしたらすぐにでもここを出ましょう。」

「いや、でも千影ってあれで結構料理が上手いんだよ。前に手料理を食べたけど、なんともなかったし…。」

「お兄様は鈍感すぎるのよ、あの千影ちゃんが何の見返りもなく料理を作るなんておかしいわ。
 絶対何か裏があるのよッ!」

「咲耶、何の根拠もなしにそんなこと言うのは千影に失礼だぞ。」

「い〜え、これは女としての勘がそう言っているのよ。同じ姉妹だからわかるわ。」

「同じ姉妹だからこそ信頼し合うべきじゃないのか?僕は千影を信じているよ。咲耶は信じていないのかい?」

「う……そんなことないけど…。」

「せっかく千影が好意でしてくれていることなんだから、信頼を裏切るようなことはしちゃだめだよ。千影は僕の大事な妹なんだから。」

「……わかったわ。お兄様の言うとおりよね。ごめんなさい、変なこと言っちゃって。」

咲耶は自分が一方的な考えしかできない事をとても恥ずかしく思った。
同時に自分達をそこまで信じてくれる兄を改めて尊敬した。


そんなこんなで数分後……
千影の料理が出来るまで本棚にあった『OH!MY!コンブ』を読んでいた。

「しかし、なんだこの雪崩カレーってのは……ちょっとでも突付くとこぼれる上に、もとより量が少ないじゃないか…。」

「こっちでは変なおじさんがトーストに絵の具をかけてるわよ……。これほんとに食べたら毒よ。」

その他には『ロックン・ゲームボーイ』、『突撃!パッパラ隊』、『まもって守護月天!』、『バオー来訪者』、『蒼天の拳』などが置いてあった。

「全部少年コミックじゃないか……しかもほとんどマニアックなものばかり…
 特に蒼天の拳なんて何であるんだ?『魔界料理の文句は私に言え』ということなのか?」

「肝心のジョジョがないわね、お兄様。」

とりあえず、『OH!MY!コンブ』は食欲がなくなるので二人は読むのをやめた。
そしてその時、厨房から千影が現れた。
                                                  アンティパスト
「やあ……またせたね……。ハォ!ツォツァイバ!(さあ!料理の始まりだ!)まずは前菜からだよ……。」

そう言って千影はサラダらしきものをテーブルに運んできた。
それはサラダに見えただけで、材料は何を使っているか一目ではわからなかった。

「で、これは何ていう料理?」

「九十九神チーズとトマトのサラダだよ……。」

「九十九神………?」

「そう……九十九神といってもたくさん種類があるが…そのなかでも食用のものを選んだ……。安心していいよ……。」



 材料

・九十九神のチーズ(4枚に薄切り)
・トマト     (5枚に薄切り)

千影特製ドレッシング

・久久能智神の葉 一枚 ・ワカメ ・オリーブオイル
・吸血蝙蝠の血 ・レモン汁 ・塩 ・コショー ・その他(言えないもの)
・ザックームの実少々(ふりかける) ・焼いたパン ・レタス(そえもの)

(賞味時期15分以内)


「この料理を最初に作ったのは私が初めてだね……。これを料理させたら……私にかなうものはいないだろうね……。
 フフフ……これは自慢ではないよ……『誇り』だ……。私は……一部の食通だけが食べる料理は出さない……。
 母から娘に受け継ぐような……素材を生かした料理を作ることが大事なんだ……。
 さあ………召し上がるといいよ……。」

「ああ、いただきます。」

兄はナイフとフォークを手にとり(自粛)チーズを一口サイズに切っていった。

「違う…。」

「え?」

突然千影に注意され兄は驚いた。

「トマトと一緒に食べるんだ……。」

「えっ?トマトと一緒に食べるのか?よくわかんないな。」

千影に言われた通りに(ヒミツです♪)チーズとトマトをフォークで一緒に刺し、口に運んでいった。
そして口に入れた瞬間。

「…………………」

兄は絶句した。

「ど、どうしたのお兄様?」

「………ブツブツ………ブツブツ………」

兄の顔はさながら『神砂嵐』をジョセフに破られたワムウのようにうつろになっていた。

「ちょっと、お兄様しっかりして!」

兄は最初、この味をどう表現していいかわからなかった。
そして最初に口から出た言葉は……

あら、お…おいしいじゃない、この料理!

あまりの美味しさに混乱し、口調が川尻しのぶになってしまう兄であった。

「こっ、これはああ〜〜っ!!この味わあぁ〜〜っ!!」

そこでようやく普通のリアクションを取ることができた。
それを見て千影は「フフ……」と薄笑いしていた。

サッパリとした(;゜Д゜)!!チーズにトマトのジューシー部分がからみつくうまさだ!!
 (;´Д`)チーズがトマトを!トマトが(・∀・)!!チーズを引き立てる!
 『ハーモニー』っていうか〜〜、『味の調和』っていうか〜〜例えるなら、緒方恵美と俺様ちゃん川口のデュエット!
かないみかに対するこおろぎさとみ!趙公明の原作に対する新藤崎竜の『国立アンニュイ学園』!
 ………っていう感じだよ〜〜っ。


「グラッツェ〜……喜んでもらえて……この上ない幸せだよ……。」

「ちょ、ちょっとお兄様、私にも食べさせてよ。」

「やだよぉ〜、あと3切れしかないんだから。咲耶も注文すればいいじゃないか。」

「しょうがないわね、そんなに美味しいなら私も一皿注文するわよ。」

「フフ………かしこまりました……。
 しかし……『肝臓』がよくなるのは……『肝臓の悪い』兄くんだけだよ………。」

「え?『肝臓』……!!そ…そういえば何かお腹から首の付け根が暑いな!妙に汗ばんできた…。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「兄くん………上着をぬぐことをお勧めするよ………。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「なっ、なんだ!?ひとりでに肩が動いてる!!それに暑い!!」

兄の肩はまるで生き物が蠢くように動いていた。そして次の瞬間「ズッ」という音とともに肩から得体の知れないものが飛び出してきた。

「うっ、うわああぁぁ!!」

「きゃあああ!!お兄様の肩から何か出てきたわ!!」

「落ちついて……それはさっき兄くんが食べた九十九神だよ……。」

「えっ!?さっきのチーズ!?」

「そう……さっきの九十九神チーズのこと……九十九神が肝臓を浄化している証拠だよ……
 それは今食べた九十九神チーズとトマトのカルシウムとビタミン………そして私が作ったドレッシングの薬が九十九神を甦らせ……肝臓の中で活動しているからだよ……。
 兄くんの肝臓の悪いところを……九十九神が喰らって出てきてるんだよ……。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
兄の肩から無数の九十九神が飛び出し、そのまま空中に消えていった。

「わああああ〜〜、なっ、なんかやばいんじゃないかあ〜〜、こんなに出てくるぞーー!!」

ドドドドドドドドドド

ノウモボタヤ…ノウモタラムヤ……ノウモソウキヒヤ……タラムヤゴゴゴゴゴ……

千影は怪しげな呪文を唱えると九十九神の動きが激しくなってきた。

黄泉の穢れより……九十九出でて喰らえ妖魔!!

呪文を唱え終わると同時に九十九神が消えていった。
九十九神によってえぐられた肩は傷一つ残らずに治っていた。

「ちょっと千影ちゃん!お兄様になんてことするのッ!!」

咲耶が千影に掴みかかろうとしたとき、

「いっ、いや!ちがう咲耶ッ!さっきまで気分がだるかったけど、急に爽快になってきた!
 体も軽いし、「肝臓」がよくなったッ

ニヤッ

「それでは少しの間失礼するよ………パスタの湯で加減をみなければならないからね………。」

そう言って千影は再び厨房に消えていった。

「スゲェーよ、千影!あいつあんなことも出来たのかッ!」

(い…いえ…やっぱり異常よ。異常すぎるわ!千影ちゃんの料理は。)

兄は千影の作る料理に感服したが、咲耶はますます不安になってきた。
そして次の料理がくるまでいつまでも連載が再開されない『まもって守護月天!』について論議を交わしていた。

「咲耶って月天のポジションで言えば、ルーアンとキャラ近いよな。」

「まっ、私とこんなタカビーなおばさんを一緒にしないでほしいわ。私はこんなに嫉妬深くないわよ。」

「それにしてもやはりキリュウはいいよなぁ。見ろ、この温泉シーンをッ。つるぺただぞッ。」

「そ、そんな…お兄様ってロリ属性だったの!?信じられないわッ!!」

そんな他愛も無い会話をしながら千影の料理を待っていた。
厨房から流れてくる異様な瘴気に気づきもせずに……。


つづく





意味も無く前編、後編になりました。原作では80ページもあるので1回では書けないです。
料理ということで当初は白雪が想定されていましたが、千影の方が話が展開しやすいので途中で変えました。
白雪の名セリフ「捌くのは姫のスタンドですの」は日の目を見ることなく消えました。
それと『ロックン・ゲームボーイ』は、ものすごいへたれなマンガだとは思いませんか?
あれを見た子供は間違いなく真っ当な大人にはなりません。
私や蒼竜アニキのように…………。

ここでは!『石鹸』で手を洗いなサイッ!
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